【ゴーン被告の会見にみえた】AI自動翻訳のおもしろ文章まとめ

はじめまして、フリーランス通訳者のNaaです。
通訳にもいろんな形がありますが、最近でいうと「ゴーン被告」の同時通訳が印象に残っている方も多いのではないでしょうか。記者会見の内容を生中継で配信するために、「AI(あい)ぽん」という自動翻訳機が使われていたのですが、これがまたスットコどっこいな仕上がりで..。今日はゴーン被告の会見にみえたおもしろ翻訳をまとめるとあわせて、「通訳の大変さ」と「通訳の仕事はなくならない理由」も解説していきたいとおもいます。
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Contents
同時通訳者って、とにかくすごい
カルロス・ゴーン被告の会見で、同時通訳さんが交代で「LIVE通訳」をおこなっていました。ものすごい早口でまくしたてる彼の言葉を、ほぼ同じタイミングで正確に訳していくのですから圧巻です。ちなみに途中で登場したAIぽん (AIの自動翻訳機)はほとんど役に立っていませんでしたから、
- どんな言葉 (方言なども) も聞き取って、
- ニュアンスを瞬時につかみ、
- スピーカーの言葉を聞き覚えながら、
- 違う言葉にはじから訳していく
まさにマルチタスクの最高潮、あれ以上に美しい仕事があるでしょうか..。職業柄か、ゴーン被告の会見より、同時通訳者さんのことが気になって仕方がありませんでした。
ゴーン被告の会見にみえる、”機械通訳”の限界
(ゴーン被告の記者会見より)
これが巷で噂の「ゴーン被告」の記者会見、一番下のリアルタイム自動翻訳をちょっと見てみてください。「たくさんの日産ドッカンブーストして…」「レバノンの友達入れ歯の子が森のモテる人物カルロスゴーン氏です….」もはや何が言いたいのかもわかりません。
(ゴーン被告の記者会見より)
というのも、翻訳機器の仕組みは、
- 話された言語を文字に起こして
- 起こされた文字を、他の言語に訳していく
そうで、どっちかが間違ってると、このように大変なことになってしまうんですね。辞書を丸呑みしている機械であっても、まともな文章ができないのに。人間の脳といいますか、同時通訳者の方ってホントに凄いです。
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通訳の仕事の大変さと、醍醐味
ここ数年はテレビ会議が浸透してきており主にZoomや、Skypeなどをつかって、3人~8人ほどで会議をひらくのですが、私がはいるものはカメラなしの場合が多いです。でもですね、これも意外とハードルが高いのです。
- 相手の表情がみえない
- 回線が物理的に、途切れまくる
- 身振り手振りのジェスチャーが使えない
- つまり、言葉で「目的と意図、ニュアンス」をすべて伝えないといけない
神経を研ぎ澄ませて聞きながら、反射で訳していくのですが、ものすごく体力を消耗します。プロの同時通訳者と一緒にするのは恐れ多いのですが、同時通訳者の方は数十分ごとに交代、チョコレートなどで糖分補給をすると聞いたことがありますが、やっぱり相当なエネルギーを使うのでしょう。
会話を聴きながら日本語脳、英語脳、思考脳をすべて同時にフル回転させるわけですから、それはつかれますよね..。ものすごい重い会議に1時間参加するだけで、残りは使いものにならないくらい、くったくたになります。
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プレッシャーはあれどやっぱり楽しい「通訳という仕事」
でもですね、裁量権が大きい人の集まる会議にはいるって、やっぱりおもしろいんです。普段じゃ聞けないような会話があったり、 新しいビジネスがはじまる転換点に出会えたり、「すごく貴重な経験」ができるのが醍醐味だとおもいっています。(もちろん秘密厳守なので、内容はどこにもいえませんが、結構おもしろい現場をみてきています)
そのぶんプレッシャーも、緊張感もあります。でもどちらにせよ、どんなポジションについても日々鍛錬が必要なわけですから、四苦八苦しながらも、実際の現場で「経験」をつんでいけるのはうれしいものです。それがおもしろいから、延々と勉強する毎日でも続けていけるのかもしれません。
なぜ「AI通訳」は人間のかわりにはなれないのか
さてさて結論にはいっていきましょう。たとえば「ハシ」という言葉をひとつとっても、「橋」と「端」「箸」といろんな意味がありますよね。人間は文脈で理解していきますが、機械には「ハシ」がどれをさすのかわからないんですね。あと人によって話し方の癖や、アクセントもありますので、機械が「聞き間違い」をしたらその時点でアウトです。
ゴーン被告が「Lebanon friends (レバノンの友達)」といったときも、機械にはLebanonが「Melon (メロン)」と聞こえたらしく、日本語訳は「メロンの友人のみなさんにも」となっていました。
(ゴーン被告の記者会見より)
一文字間違えるだけでとんでもない訳になってしまうんですね…。
AIぽんの字幕をリアルに使ったことで、「通訳者はやっぱりいつの時代も必要だ」と感じた人も多いのではないでしょうか。それに人が話すと切迫感もでますし、印象的にもまったくかわってきますね。
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あとがきにかえて
というわけで、記事をまとめますと
- 通訳にもいろんな形があり、なかでもテレカンは難易度が高い
- 適度なプレッシャーは必要、レベルアップするチャンス
- AIは同時通訳 (プロ) には、全くかなわない
- AIより何よりすごいのは人間の脳
ということでした。世の中色々な仕事がありますが、語学はとくに「終わりのない」というか、一定をこすと「マニアック」な領域にはいっていく気がしています。
「利益を出す」という表現ひとつとっても、make profitではなく、generate profit のほうが「利益をなんとかして生み出さないと」といったニュアンスが伝わるとか。try(やってみます)より、aim to (目指します)のほうが、やる気が感じられたりとか。そういった細かいニュアンスを頭に刻む毎日です。終わりがないから、楽しいんですけどね。それにやればやっただけ、想像できなかった世界が見られるんですから、やりがいがあるなある、と日々勉強です。
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