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【ダイヤモンドプリンセス】なぜ崎陽軒のシウマイ弁当は届かなかったのか

 
シウマイ弁当はどこへ消えた (崎陽軒とダイヤモンドプリンセス)
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フリーランス通訳者。バンクーバー留学後、現地貿易会社にてインターン。貿易職を5年、世界30カ国以上の取引に携わる。通信会社にて社内通訳・翻訳を2年、ビックデータ関連の海外取引に携わる。国際交流のイベンター、司会業など複数の職を持ち英会話スクールのカウンセラーを併任。2020年に独立。

新型コロナの影響をうけ、横浜と東京にて停泊していたダイヤモンド・プリンセス先が見えぬなか212日差し入れられた崎陽軒のシウマイ弁当。しかし乗客の手には届かず「あれはどこに消えたのか」と話題になりました。

ただ船の貨物を取り扱っていた私としてはこれ、「致し方ない」ともおもうのです。なぜって船が日本の港にいても、あれは「イギリス船籍の船 (つまり中は外国扱い)なんですよね。この記事では、なぜシウマイ弁当は届かなかったのか、「船への貨物を取り扱う」側の視点から考察していきます。

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ツイートから紐解く、実際に何が起きていたのか

【ダイヤモンド・プリンセス】なぜシウマイ弁当は届かなかったのかを徹底考察

差し入れの翌日、乗客から「手元にこなかった」「どこに消えたのか」といったツイートがちらほら見えるようになりました。この問題に食い込んだのが、アナウンスや船内状況をこまめに発信していた だぁ(@daxa_tw)さんです。ツイートから、何が起きていたのかを分析していきたいとおもいます。

 

乗客のツイート 「たしかに準備されていたのに」

まず213日のツイートをみると、

  • シウマイ弁当が212日差し入れられたこと
  • でも賞味期限 (当日16時) までの乗客へ運べなかったこと
  • 結果として、4000食ものシウマイ弁当が廃棄となってしまったこと

がわかります。また別の乗客が、「シウマイ弁当が用意されている」のを撮影していました。

【ダイヤモンド・プリンセス】なぜシウマイ弁当は届かなかったのかを徹底考察

なので、この時点ではきっとタイミングさえあえば、船内に持ち込める手筈になっていたのだとおもいます。ちなみに船はイギリス船籍 (日本の港にいても、船中は外国扱い) ですので、なにかモノを船にいるためには必ず「通関手続き」が必要です。崎陽軒によると「代理店に手配をお願いした」とのことなので、そこらへんのフローもきちんと辿られていたのでしょう。

 

船会社に連絡をとりかえってきた返事は

理由がわからないのですから、お怒りになるのもわかります。このツイートのポイントは3つですね、

  • 横浜税関での検疫に時間がかかった
  • 船に積み込もうとしたとき、水の精製のために船が沖にでていた (でも実際は船は沖には出ていなかった)
  • そして船がまた戻るまでに、賞味期限は切れてしまった

水の精製は乗客の暮らしを守るためには必須なものです。シャワーやトイレ、キッチン、などどこでも水は要り用です。船が水を調達はおもに、シンプルに港で給水する方法、と、船舶用造水装置で海水から真水を作るという2つの方法があります。

【ダイヤモンド・プリンセス】なぜシウマイ弁当は届かなかったのかを徹底考察

ただ実際に船は動かなかったのだとしても「沖に出ることを計画していた」ということはありえるかもしれませんね。いつでも沖へ出られる状態でスタンバイしていたとしたら、「荷物を船内にいれる」ということは、たしかに難しいかもしれません。

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なぜシウマイ弁当が届かなかったのかを分析

クルーズ船への差し入れに、色々手続きがいる理由

ダイヤモンド・プリンセスは『イギリス船籍』なので、荷物の積み下ろしには輸出入手続きが必要なのです。図にするとこんなかんじです。

【ダイヤモンド・プリンセス】なぜシウマイ弁当は届かなかったのかを徹底考察

ちなみにもっとかんたんにいうと崎陽軒のシウマイは「日本貨物」ですから、税関を通して「外国貨物」にかえないと「イギリス船」にはのせられないのです。「それに時間がかかったのではないか」という見解がでていましたが、「いやいや、違いますよ」っていう回答を横浜税関が出しております。

 

クルーズ船って、そもそもどこの国の法律が適用されるの?

【ダイヤモンド・プリンセス】なぜシウマイ弁当は届かなかったのかを徹底考察

船内では基本的に、旗国 (船籍) の法律が適用されます。今回のダイヤモンド・プリンセスの場合は、船籍がイギリスでしたので、イギリスの法律が適用されます。ただ港に停泊中や湾内では、その国の法律が適用されるそうです。ちなみに、警察権を持っているのは船長だそうです。 (ただこれは法律の問題ですので、荷物をやりとりするときに輸出入手続きが必要なのは変わらないですよ)

 

「検疫に時間がかかったのでは?」に対する横浜税関の回答

【ダイヤモンド・プリンセス】なぜシウマイ弁当は届かなかったのかを徹底考察

「検疫に時間がかかったのでは?」という説に、横浜税関etcは、

船への荷物の積み下ろしの際の確認は行うが、権益は横浜検疫所が担当」、その横浜検疫所は「日本の輸入の検疫を担当している。今回の件は、港湾局ではないか」、そしてその港湾局は「危険物のチェックはしているが、虫がはいっているかどうかや、疫病にかんすることは管轄外」と回答。さらに、港湾局は「検疫の判断は検疫所の判断になる」ことから、検疫所が「輸入の検疫のみ行なっている」と回答したのであれば、「シウマイ弁当は国内のものだから、検疫対象ではない」という判断したのではないかという見解を述べた。(MAG2NEWSより引用 https://www.mag2.com/p/news/440188)

と述べたそうです。難しくみえますがポイントは、

  • 日本へ荷物をいれる際は、通常食品検疫をおこなうけれど、
  • 今回は逆なのでそういったことはしていない
  • ただもちろん積む際に「危険物でないか」などは確かめている

というところ、まとめると「遅れたのは税関 (関係) の事情ではない」ってことでしょう。

 

色々な矛盾点をまとめてみると

【ダイヤモンド・プリンセス】なぜシウマイ弁当は届かなかったのかを徹底考察

だぁさんのツイートにあった「船会社に確認したひと」がいうには、

  • 横浜税関での検疫に時間がかかった
  • 船に積み込むときに、水の精製のために船が沖にでた (実際船は沖には出ていない)
  • 船がまた戻るまでに賞味期限は切れていた

とのことでしたので、「検疫部分」に双方の矛盾がでていますね横浜税関は「検疫はない」と述べているのですが、船側は「税関の検疫に時間がかかった」と主張

ただ東京・横浜で5年間輸出入に従事してきた自分としては 、輸出時の検疫って通常ないので、

  • 船内受け入れのときの検疫に時間がかかったか
  • それ以外の理由か

といったところだとおもうのです。

 

なぜシウマイは届かなかったのか、3つの仮説

【ダイヤモンド・プリンセス】なぜシウマイ弁当は届かなかったのかを徹底考察

いろんなことが言われていますが、事実らしきことは、

  • 崎陽軒は代理店へシウマイを渡して、
  • 代理店もしかるべき書類作成などの対応を行い
  • 横浜税関も輸出手続きを許可したらしい

ということですね

それをまとめますと、3つの仮説がたちます。

  • 船への積み込みのタイミングが間に合わなかった (水精製のためのスタンバイなどなど)
  • シウマイ弁当は搬入できたけど、賞味期限に間に合わなかった (他の必要物資の搬入が優先されたため
  • ③この時期に船の指定でない食品を受けるのを、船側 (またはどこか他の機関) が拒んだ

個人的にはこの中のどれかじゃないかなと思っています。(※あくまで出ている情報からの仮説)

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まとめ

【ダイヤモンド・プリンセス】なぜシウマイ弁当は届かなかったのかを徹底考察

シンプルにまとめますと、

  • クルーズ船内は外国扱いなので、かんたんにモノをいれることはできない
  • 当日16時までに届けるのは、スケジュールが厳しい (手続きが多いので)
  • 船への積み込みのタイミングをはかるのはとても難しい

といったところでしょうか…. なんでこの記事をかいたかというと、「誰も悪くない」と思ったからです(この切迫した時期に責める方はおられないかもしれませんが) 各機関ともに全力を尽くしての今回の結果だったように思えるのです。

唯一教訓とするのであれば、「予定通りにいくことはほぼないということでしょうか。とくに今回の場合、「するべきこと」が色々とあって、「状況」も逐一変わっていましたから、仕方なかったといいますか。乗客の命 (生活を維持して守るため)少しでも快適な生活を送ってもらうために、色々優先位づけをしていった結果なのかなともおもいます。人命が第一ですから。

 

あとがきにかえて

【ダイヤモンド・プリンセス】なぜシウマイ弁当は届かなかったのかを徹底考察

ここでひとつどうしても書きたいとおもったのが、「港で働く人々の存在」です。いまコロナ問題で「中国産の品が不足する」といわれていますが、本当に日本は貿易大国なのです。いろんなものを世界中から輸入しているから、「安くて、良いもの」に囲まれてわたしたちは暮らしていくことができています。そしてその貨物は、日夜問わず、港へ船で運ばれているのですね

海上輸送のリスク (湿度によるカビの発生)

東京港には1⽇約500隻が航⾏しており、深夜2時到着とかもザラなんですね。猛暑でも、極寒のなかでも、港のおじさん (お兄さん) たちが荷下ろし・荷積みをしてくれているから、この便利な生活が成り立っているのです。

ちょっとシウマイとはずれましたけれど、外国製品も「安いからすぐダメになるし」と捨てるのではなく、それを一生懸命つくるひと、運ぶ人、いろんな人の想いがあって自分のもとに届いたんだということを時々思い出していただけると、とてもとても嬉しくおもいます。最後までお読みいただきありがとうございました。(取材・記事執筆のご依頼はお問い合わせフォームよりお願いいたします)

参考にさせていただいた記事

  • https://www.theguardian.com/uk-news/2020/feb/18/britain-to-evacuate-citizens-from-coronavirus-hit-cruise-ship-diamond-princess
  • https://www.pa.ktr.mlit.go.jp/wankou/data/index.htm
  • https://www.rakuraku-boeki.jp/column/moto_tsuukanshi/2020-02-15
  • https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200213-10000312-it_nlab-soci
  • https://www.mag2.com/p/news/440188
  • 横浜税関

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フリーランス通訳者。バンクーバー留学後、現地貿易会社にてインターン。貿易職を5年、世界30カ国以上の取引に携わる。通信会社にて社内通訳・翻訳を2年、ビックデータ関連の海外取引に携わる。国際交流のイベンター、司会業など複数の職を持ち英会話スクールのカウンセラーを併任。2020年に独立。
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