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【英語が出来れば通訳もできる】という、とんでもない誤解

2020/11/12
 
独学で通訳
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フリーランス通訳者。バンクーバー留学後、現地貿易会社にてインターン。貿易職を5年、世界30カ国以上の取引に携わる。通信会社にて社内通訳・翻訳を2年、ビックデータ関連の海外取引に携わる。国際交流のイベンター、司会業など複数の職を持ち英会話スクールのカウンセラーを併任。2020年に独立。

はじめまして、通訳・翻訳のNaaです。今朝は社長室案件でLA企業との通訳にはいったものの、話者の意向通りに訳せていなかったらしく、打ちひしがれておりますでもこの後にも会議が続いてはいっているわけで、自分の成長のためにも「今回なぜ通訳がうまくできなかったのか」を分析していきたいとおもいます。

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通訳って、そんなに万能なものじゃない

英語ができれば通訳ができる、というとんでもない誤解

これはアメリカ人の彼と、うちの両親の通訳にはいるときも、会社で日本人と外国企業の間にはいるときにもいえることなのですが。「通訳」を翻訳こんにゃくみたいなものだと思っている人って結構いるような気がしているのです。たとえばですけど、

 

通訳泣かせ、主語を省略する日本人

英語ができれば通訳ができる、というとんでもない誤解

たとえば「マレーシアにプラスチックの粒子をおくって、奥地にある工場に移動させて、メガネのフレームを射出でつくってほしい」とかですね。これみなさんパッと英語にできますか?ちなみにわたしはできません。日本には「空気を読む」という文化がありますから、前後で推測できたりするのでしょうが、海外では「全て説明しないとわからない」が大前提、遠回りがいちばん近道だったってパターンも多いのです。

 

機械通訳と、人間通訳の違いを比較してみると

英語ができれば通訳ができる、というとんでもない誤解

先ほどの文章をつかって、「機械翻訳」と「人間の翻訳」の具体的な違いをみていきたいとおもいます。

例文:英語ができれば通訳ができる、というとんでもない誤解マレーシアにプラスチックの粒子をおくって、奥地にある工場に移動させて、メガネのフレームを射出でつくってほしい

これをGoogle翻訳で直訳すると

英語ができれば通訳ができる、というとんでもない誤解Send plastic particles to Malaysia, move them to a factory in the hinterland, and inject frames for glasses

プラスチック粒子をマレーシアに送り、後背地の工場に移動し、眼鏡用のフレームを注入します

となりますけど、「誰が誰に対して、何をするか」がまったく不明瞭で、かなり不完全な文章になるんですよね。これを人が英語に直すと、

英語ができれば通訳ができる、というとんでもない誤解We (our company) is planning to send plastic particles to Malaysia, and ask forwarding agent to move those to the factory in xx(エリア名). And then, wed like askyou (factory) to transform into the frame of glasses by using an injection machine.

わたしたちがまずプラスチック粒子をマレーシアにおくり、輸送業者にお願いをしてxx (エリア名)の工場にはこんでもらいます。なので工場には射出機器をつかって、メガネのフレームを生成してほしいのです。

と、かなり具体的な文章になります。

以前「あなたの意訳はいらないから、理解しようとしなくていいから、ぼくのいったことを直訳してよ」と無理をいう社長さんがいらっしゃいましたが、「直訳だと伝わらない」から、「主語や補語など、相手が理解できるように、バックグラウンドをみて補足していんですよ。ただそこの大変さを見せない、うまく訳していくのが優秀な、プロの通訳さんなのでしょう。(でもやっぱりイラっとくる)

英語ができれば通訳ができる、というとんでもない誤解

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通訳だけを聞くと、言葉を置き換えているようにみえるけど

英語ができれば通訳ができる、というとんでもない誤解

「言葉を変換するだけでしょ」と思われる方もいるようなのですが、全然そんなことはないと声を大にして言いたい。通訳さんたちは「準備期間」を見せていないだけです。「通訳する」ための1時間のために、何十時間もの下調べと準備が水面下にあるんです。先ほどの例でいうと、人間が訳した文では「誰が、具体的に、何をして欲しいか」が明確になっています

We (our company) is planning to send plastic particles to Malaysia, and ask forwarding agent to move those to the factory in xx(エリア名). And then, wed like askyou (factory) to transform into the frame of glasses by using an injection machine.

わたしたちがまずプラスチック粒子をマレーシアにおくり、輸送業者にお願いをしてxx (エリア名)の工場にはこんでもらいます。なので工場には射出機器をつかって、メガネのフレームを生成してほしいのです。

でもこの訳をつくるためには、そもそも、

  • 自分の会社と相手の関係性
  • マレーシアのxx地域に工場があること
  • プラスチック粒子が、射出機器でメガネフレームになること
  • forwarding company (運送業者) といった単語

などなど、背景といろんな語彙を知っている必要があるのです。

英語ができれば通訳ができる、というとんでもない誤解

「transger it tby car (それを車で運ぶ)」っていうとぼんやりしすぎていて、「誰が運ぶのか」不明確ですからね。一度この確認をミスって、原料はマレーシアについたのに、「港に誰もとりにこない」と大問題になったことがあります。

直訳は危険ですが、だからといって「通訳の解釈」をいれると、意図がねじ曲がって伝わってしまうことがあります。だからあくまで「黒子」であり、理解はするけど、あくまで主役のスピーカーが何を伝えたいのか、にフォーカスする必要があるんですね。

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駆け出しの頃のしんどさ

英語ができれば通訳ができる、というとんでもない誤解

通訳の大変さについて、こんな記事を発見しました。

通訳をしているところしか見せないので、どういう準備をするのかという部分は知られていません。通訳だけを聞くと、言葉を置き換えているだけのように思われますが、内容によっては準備に膨大な時間がかかりますし、2時間程度のセミナーの準備で1日以上かかることも珍しくありません。よくやっている分野であれば、この程度でいいかという準備の落とし所がわかるので、準備時間も読めるのですが、やったことのない分野だと始めてみて全く進まなくて、寝ないまま仕事場に向かうこともあります。(中略)

駆け出しの頃は自分の英語力が足りないためにわからないと思い込み、準備に異常に時間がかかっていました不慣れな分野の場合、資料の準備ができても、普段使わない英語や日本語の単語リストを作るだけでは不安なので、大声で資料と単語リストを読みまくり、本番を想定してある程度言葉が出てくるまで練習します(通訳はつらいよ 上谷覚志(フリーランス通訳者) やりなおし!英語道場より引用)

英語ができれば通訳ができる、というとんでもない誤解

経験があり、プロの方でも「下準備」には膨大な時間をかけているとのこと。わたしはまだまだ駆け出しなので、新卒一年目のような、なんともいえない「もどかしさ」を感じるんですよね。「通訳しているとき」って華やかでかつ完璧なようにみえますが、それは本当に一部氷山のようなもので、ほんとに「一部」で、あとはほぼほぼ下準備だったりするんです。

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英語ができるからって、通訳できるわけじゃない

英語ができれば通訳ができる、というとんでもない誤解

通訳ってホントに大変なんです。なのでフリーランスでそれを専門とされている方は、裏にものすごい努力と知識、絶え間ぬ勉強の日々があるのだとおもいます。逐次通訳 (話者が区切りの良いところまで話し、通訳者がそこまでの話を訳す、を繰り返すこと)だったとしても、

  • スピーカーが他言語で話していることを聞き
  • 理解して覚えながら、日本語に置き換えていく

そもそも日本語であったとしても、「IT関連の部署に長くいたひと」が、貿易部の会議に突然参加しても、畑違いでよくわからないですよね貿易には特殊な慣習や、ルールがありますから、「日本語」であっても全体像を理解するには1年ほど従事する必要があるといわれています

 

にわか通訳はかえって危険な場合も

英語ができれば通訳ができる、というとんでもない誤解

だから「英語ができる」→「あの人に通訳をお願いしよう」はある意味危険なのです責任が大きければ大きい会議であるほど、会社にとってもリスクですし、無理なポジショニングはその人の希望や将来を潰してしまう可能性もあります。重要なものであるほど、会社は「適切な人材」をポジショニングすることが大切なんですね。

才能があったら、こんなに悩むことはないのだろうか。それでも「その道一本で食べていく」ことにはまったくワクワクせず….わたしはやっぱり、「通訳専任」にはなれないな、とおもうのでした。それにしてもフリーランスで、プロの通訳さんてほんとにすごいと改めて思いました…..。

(2020年1月時点の記事です。同年7月にフリーランサーとして独立しました)

 

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フリーランス通訳者。バンクーバー留学後、現地貿易会社にてインターン。貿易職を5年、世界30カ国以上の取引に携わる。通信会社にて社内通訳・翻訳を2年、ビックデータ関連の海外取引に携わる。国際交流のイベンター、司会業など複数の職を持ち英会話スクールのカウンセラーを併任。2020年に独立。
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