大人でもできる英語脳の鍛え方【通訳がまとめる具体的な方法】

はじめまして、通訳・翻訳のNaaです。以前通訳にはいるときいちから翻訳するのではなく、「日本語脳」「英語脳」を交互にフル活用していることをお伝えしました。
どういうことかというと、英語で話しかけられたときは、脳の思考回路が英語になるのです。日本語の場合は、日本語の思考回路がうごき、それを自動変換するような機能が頭のなかに埋め込まれているような感覚でしょうか。今日は英語脳を身につけるとどんな利点があるのか、そして具体的な英語脳の鍛え方を詳しくご紹介します。
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英語脳を身につけるべき理由5つ
英語脳を身につけると、
- 日本語感覚で英語が聞き取れるようになる
- 聞こえた英語に、反射的に(英語で)反応できるようになる
- 間に日本語をいれるより、圧倒的に話すスピードがあがる
- 「Sky is the limit. (限界はないよ)」などの、訳しにくい慣用句も自然に理解できる
- まさに英語がペラペラという状態に
といった利点がたくさんあり、まるで日本語のように言語を操ることができるようになります。自身は生粋の日本人で、英語脳は大人になってからの後付けです。大人が赤ちゃんと同じように習っても効果はないですが、逆に日本語脳がしっかりとできた状態で、英語脳を頭のなかに作ることは充分に可能なのです。これは科学的にも証明されています。(苫米地英人著 1日10分!「英語脳」の作り方参照)
「英語脳」の作り方と鍛え方
① (大前提)伸びない理由を他者のせいにしない
世の中には確かに「才能」が必要なものがあります。しかし語学だけは別、「一定時間、正しいやり方で、根気強く続けた者」は必ず報われるもの、それが語学です。それはアメリカで英語を話す家庭に生まれた赤ちゃんは、遅かれ早かれ英語を話せるようになることが証明しています。もちろん赤ちゃんから学ぶのと、大人になって学ぶことは方法が違いますが、原理は一緒です。本当に英語を習得したいのであれば、私たちが言いがちな
- わたしには才能がないから
- 時間がないから
- 教材(または先生)がよくない
はすべて言い訳だということを理解しなければなりません。これをいくらいっても「上達」するわけではないからです。結果には必ず原因がありますので、「じゃあ自分はどうしたら伸びるのか」を考えるようにしましょう。伸びない原因を他者のせいにすると、自分の課題が見えず変わらぬままです。わからなければ勉強上手なひと、伸びているひと、苦労して乗り切って話せるようになったひとに聞いてみるのもいいでしょう。
②英語脳は大人になっても作れるってホント?
簡単にいうと、英語脳をつくる、ということはすなわち、皆が持っている「日本語のパイプ」に「英語のパイプ」も頭のなかに作ってしまおう、ということですね。バイリンガルとはつまり英語と日本語、両方のパイプが脳にあり、英語を聞いたら英語のパイプで、日本語を聞いたら日本語のパイプで物事が処理されるのです。科学者苫米地英人さんの本の中に、わかりやすい表現があったので引用させていただきます。
私たちが日本語を使えるのは、脳内の神経ネットワークの一部が、日本語を学習したからです。つまり、ある神経ネットワークが日本語モードにチューニングされたということ。これが、私たちが持っている「日本語脳」です。(中略)
脳内のある神経ネットワークが「日本語脳」にチューニングされ、固定化されてしまったのなら、まだ使われていない別の神経ネットワークに英語を学習させればいいのです。つまり、すでに持っている「日本語脳」とは別に「英語脳」をつくるということです。苫米地英人 「1日10分!「英語脳」の作り方」より引用
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③ 脳のなかに「日本語脳」に「英語脳」をプラスする方法
ではどうやってその脳を作るのか、答えはとてもシンプルです。それは、
- インプットする
- インプットした言語で、頭整理、
- 整理できたものを、そのままアウトプット
という訓練を相当数繰り返すこと。そうすると脳に新たな思考回路ができて、必然とその言語の対応機能が脳に新しくできていきます。これこそが「英語脳」の正体です。
英検2級、TOEIC700後半くらいの基礎知識はつけておこう
聞くだけ学習に効果ナシという記事で、「基礎知識がない状態で英語を聞き流す」ということは、「算数の公式しかわからない小学生が、高校の数学の教科書をざっとみるのと一緒」という例えをしました。数学の公式を知らない状態で、高校生級の数学を解くのはほぼ不可能です。
英語でもこれは一緒、つまり「英語脳」をつくるためには、「ある程度の単語数と、基本文法」を理解してからでないと効果は出ないのです。単語数と文法はだいたい連動していると考えても、だいたい8,000-9,000語ほど覚えてからだと効果が出やすいです。(語彙数確認方法はこちら)
英語脳作りに効果的な、勉強方法とは
キーは、日本語脳が稼働するまえに英語で考える思考回路を作ること、そしてそのプロセスをひたすら繰り返すことで思考回路を脳に固定させる(無意識下でもできるくらい、身体に染み込ませてしまう)ことです。
具体的には、
- 英語文献の多読、速読
- 留学(英語環境に身を置く)
- シャドーイング
- リテンション
- パラフレーズ
などがありますが、おすすめなのはシャドーイングです。
シャドーイングとは、聴こえてくる英語をシャドウ(影)のようにひたすら声に出し追いかけていく勉強法です。そしてこれは通訳訓練にも使われています。慣れないうちは、意味は考えずひたすら、自分が蓄音機になったように、機械的に真似していくことがオススメです。(参考記事:シャドーイング3日目で英語が聞き取れるようになった話|TOEIC(L)満点)
なぜシャドーイングが効果的なのか
シャドーイングは、0,3-5秒に聞いた音をひたすら追いかけていくので、日本語脳が働く余裕が全くないのですね。具体的なやり方については、教材がたくさん出ていますので、アプリや本屋で自分が納得いくものを見つけるのが一番です。ただし、外せないのは、「発音の克服」と「リズム」を掴むことです。
発音とリズムを克服すれば、英語が自然に聞き取れるように
君の名は(英語版)の一場面でみてみましょう。
Ever since that day, the day a star fell. It was almost like seeing something out of a dream.
(君の名は、Your nameより抜粋 筆者ディクテーション)」
おそらく聴こえてくる英語は、自分で想像している音と違うものが多く、繋がっていたりこもっていたりはっきり聴こえないとおもいます。これは恩師でもあるカリスマ講師Rk englishリチャード川口の教えですが、それもそのはず、これは「ゴニョゴニョ聞こえるのではなく、彼らはゴニョゴニョ喋っている」のです。
シャドーイングを重ねていくと、段々とゴニョゴニョ~としか聞こえなかったものが、「意味を持つ言葉」として聞こえるようになってきます。いままでのイメージはこのように、一語ずつしっかり発音すること。
エヴァー シンス ザットデイ, ザ デイ ア スターフェル、イトワズ アールモスト ライク シーイング サムティング アウト オブ ドリーム
Ever since that day, the day a star fell. It was almost like seeing something out of a dream.
だったのですが、実際は、
エヴァシンザッディ, ザデイ、ヮズォルモスラィッ, サムティン アウトブァドルィム
Ever since that day, the day a star fell. It was almost like seeing something out of a dream.
と、リズムも切るところも、全然違かったんですね。だからたとえ、この文章が文字で見ればわかるものも、ネイティブの音で発音されてしまうアウト。頭の中でそれらが同じものだと紐づかず、「聞き取れない」となってしまっていたのです。シャドーイングを重ねて、できるだけ多くのネイティブ英語を、英語のまま吸収していくと英語脳はどんどん発達していきます。
日本語を聞くときに、わたしたちはいちいち頭を使いませんよね。意識せずとも、何を言っているかだいたいわかるとおもいます。英語脳が育つと英語も同じく、無理なくぼーっとしていても自然に理解ができるようになります。
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英語のままで、理解できるようになるってどういうこと?
シャドーイングを重ねるほど、自分の「英語脳」というタンクのなかに、単語、文法、表現がどんどん溜まっていくのがわかるとおもいます。そうすると、「日本語脳」を使わなくても、「英語脳(というタンクにある情報)」だけを使って会話ができるようになっていくのです。例えば先ほどの文は日本語訳をするとこうなります。
Ever since that day, the day a star fell. It was almost like seeing something out of a dream.
星が降ったあの日から。あの日はまるで、夢のように、
Nothing more or less a breathtaking view
夢の景色のように、ただひたすらに美しかった
(君の名は、Your nameより抜粋 筆者ディクテーション)
しかし、英語脳が活性化していると、こう聞こえてくるはずです。
Ever since that day, the day a star fell. It was almost like seeing something out of a dream.
(英語で理解)あの日から、星が降った、それはまるで夢のように
Nothing more or less a breathtaking view
(英語で理解)それ以上でも以下でもない、息を飲むような景色だった
(君の名は、Your nameより抜粋 筆者ディクテーション)
いちいち日本語を思い出して、あれはこういう意味で…と繋げるのではなくて、英語のタンクのなかから、情報を探してつなげて、そのまま理解ができるようになる、そうなると日本語脳をいちいち通す必要がないので、聞き取りも会話もスピードは驚くほどあがるはずです。
同時通訳者の見解
ちなみに同時通訳者のなかでも様々な解釈があるようで、ダライ・ラマ14世の同時通訳の関谷英里子さんは「耳から得たスピーカーの情報が、イメージ(映像)となって浮かび上がり、そのイメージを言葉にします」と、ビジネス英語塾を運営し自身も同時通訳者である宮本大平さんは「日本語を先に発送してしまっても問題なく、思いついた日本文を囚人に英訳できればいい」とご自身の著者でおっしゃっておりました。
どちらも優れた通訳者さんで、恐れ多く比べることもできないですが、個人的にやっているのは関谷さんの方法です。科学者苫米地英人さんは、シャドーイングでなくiPadを使った多読で英語力を鍛える方法を提唱していらっしゃるので、英語脳の作り方は自分が苦なく続けられるものがベストではないでしょうか。
英語脳の作り方、鍛え方まとめ
ということで、まとめますと、
- 英語を自由に操れるようになるためには、
- 日本語脳にプラスして、英語脳を頭の中に作ってしまうこと
- そのために効果的なのがシャドーイング
- ただし、基礎がないのに応用はできないので、
- 最低でもある程度(8,000語前後)の語彙と中学レベルの文法は身につけること
- スポーツ、芸術には才能がいるが、語学は時間をかければ必ず報われるものである
ということでした。
理屈で表すのは簡単ですが、挫折するひとが多いのも事実です。それは、スタート地点である「8,000語 保持者( TOEIC700レベル)のスタートラインにたつまでが、相当地味で、地道で、根気のいる作業であり、そこから更にもう一歩踏み出し芽が出る前にやめてしまうことが多いだからだと思います。芽をだすために必要なのは才能なんかではなくて、根気と継続力です。
いつだって物事はシンプルで、やるか、やらないか。言語ができる人たちの、裏にはきっと相当な努力があり、本当に伸ばしたいと思うならある程度負荷は不可欠です。そしてそれはどんな形でも絶対に自分の力になるものです。あと少しという方はそのまま、ここからという方はぜひ走り続けてみてくださいね。
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