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【翻訳者ブログ】難しいのに病みつきになる契約書翻訳とは

 
契約書翻訳
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フリーランス通訳者。バンクーバー留学後、現地貿易会社にてインターン。貿易職を5年、世界30カ国以上の取引に携わる。通信会社にて社内通訳・翻訳を2年、ビックデータ関連の海外取引に携わる。国際交流のイベンター、司会業など複数の職を持ち英会話スクールのカウンセラーを併任。2020年に独立。

はじめまして、フリーランス通訳者のNaaです。

私は英語を教えるプロではないので、このブログでは勉強方法云々よりむしろ生々しい海外取引現場でのお話しとか、こんなことあると楽だよーといったニッチでディープな情報を発信しています。今日は一般的に難易度が高いとされる契約書類(自他社利用規約含む)の翻訳もうやりたくないと思いながらも、ついつい手を出してしまうその魅力をご紹介したいと思います。

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契約書翻訳がとにかく難しい理由

契約書翻訳が難しいのは、「英文の難易度が高い」からに加えて「ビジネスに精通していないと解けない」からだとおもいます。

  • 誰が、誰に対して、
  • どんな義務を課せて、
  • どんな免責をかぶせているのか

ビジネス構造を理解しないと、翻訳は意味をなさず「ただの文字の連なり」になってしまいます。痛いですがわたしも一番最初の翻訳でそういった経験があります。契約書は、単語の意味が普段と違ったり、決まったフレーズがあったり、そもそも日本語の文書の意味がわらなかったりちょっとしたコツ(というか慣れ、技術)が必要なんですね。

 

契約書翻訳はこうやって翻訳していく

①英語原文をざっとみながら、下訳を作る

下記利用規約の一部を引用したものですが、これを例に解説していきます。

まずは原文にこれに目を通しながら日本語にざっくりと訳していきます。この段階では全体像の意味が取れればいいのでGoogle翻訳/みらい翻訳などの翻訳機を使って、ざっと一気にやってしまうことが多いです。こちらの原文は、ざっとみただけでも、いかにもヘビーな印象を受ける英文ですね。

英語の利用契約原文

Taxesー You are responsible for the calculation, invoicing (if required), validation and payment of all sales, use, excise, import, export, value-added, withholding and other taxes and duties assessed, incurred or required to be collected (“Taxes”) or paid for any reason in connection with any Transaction and with Your Marketplace Content. We need not determine whether any Taxes apply to any Transaction, and we are not responsible for remitting Taxes to any taxing authority for any Transaction, or for reporting any information (including the payment of Taxes) for any Transaction. Despite the foregoing, when we are legally obligated by a valid taxing authority, we will collect Taxes, and we will provide Subscribers with a compliant tax invoice. (公になっているAmazon社の利用規約を一部引用させていただいています)

 

②下訳はこんな感じで、結構ざっくり

翻訳機は優秀ですけども、「主語」「述語」がこんがらがって訳されていることもありますし、英単語も契約書では全く意味になることも多々あります。優秀な翻訳機も契約書ではここらへんがネックになのですね。とまあ、ここまでは比較的力いらずでいけますが、大変なのはここからなのです…ちょっと見ていただけるとわかると思うのですが、これだとまだ文字の羅列で、わからなくもないけど「よくわからない」んですよね。言うならただの和訳(無理やり)であって翻訳…ではないんですよね。

ざっくり作った下訳

税金ーあなたは、あらゆる取引およびお客様のマーケットプレイスコンテンツに(「税金」)関連するあらゆる理由により、評価、使用、消費、輸入、輸出、付加価値、源泉徴収、およびその他の税・関税の計算、請求(必要な場合)、検証および支払いについて責任を負います。取引に税金が適用されるかどうかを判断する必要はなく、また取引の税務当局への税金の送金や、取引の情報(税金の支払を含む)の報告については責任を負いません。上記にもかかわらず、当社が有効な税務当局から法的義務を負う場合、当社は税金を徴収し、加入者には準拠した税金請求書を提供します。(英語原文を元に当方が作成)

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③ ビジネス形態を理解し、原文と翻訳を一つずつ確認

1番大変なのが、下訳から完成版まで持っていく作業です。これがもう途方もなくしんどいのですけど。

主語となりうるひとつひとつのワードを整理して、

  • We, the company (わたしたち、当社)
  • You, your company, customer (あなたたち、御社)
  • Subscriber, Users (利用者、加入者)

特殊な用語を、このビジネス上で意味がある日本語に置き換えて、最後に意味が遠おるように日本語を整理して、終わったらもう一度、原文と見比べながら

  • 意味が通っていない場所はないか
  • 主語が間違って訳されていないか

をすべて最初から見直します(冗談抜きで、これがほんとにしんどいんですよね)。

紙の場合はアナログでチェック

(主語がどこにかかっているかも必ず確認)

今週やったのは日本語20,000字、A4 23ページという大作でしたがもう頭が沸騰寸前でした。適度に休まないとゲシュタルト現象みたいに、何が何だかわからなくなってくることも(笑)

 

④ すべて確認し終えたら、ようやく「翻訳文書」に

英文の利用規約は、読みやすさと正確さが求められます。ちなみに何か起きた時には原文の意味が優先で、特筆されていない限り日本語訳はあくまでも補足だからです。なので結局これはあくまで参考、なにかあったらまた自分のところに戻ってきて、「該当箇所」を確認することになることも….。

利用規約 翻訳文書

税金ー御社はマーケットプレイスのコンテンツに関連して発生した取引および関連して発生した、(必要な場合)、すべての売上税、使用税、消費税、輸入税、輸出勢、付加価値税、源泉徴収、および関税の検証および支払いについて責任を追うこととします。当社は取引に税金が適用されるかどうかを判断する必要はなく、また取引の税務当局への税金の送金や、取引の情報(税金の支払を含む)の報告についても責任を負いません。前述にかかわらず当社が有効な税務当局から法的義務を負う場合、当社は税金を徴収し、利用者(サブスクライバー)にはそれに準拠した税金請求書を提供します。

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それでも契約書翻訳に魅了されるのは

それはビジネスの根本だからでしょう。本当に翻訳の部分だけを担当する仕事もあるのですが、該当の会社同士のやりとりにそのまま入ることも多いので、

  • 契約書を全部読んでいる(翻訳すると大体覚えてしまう)

というのは、取引していく上ですごくメリットなのですね。なにかあったとき責められたときも、「それは契約書にないから」とさらっと引用できるし、契約・利用規約を最初からしっかりよんでいるので、「え、だめなの、知らなかった」と諍いになるようなこともありません。なので下訳~完成版に持っていく作業はとんでもなく労力を使うんですが、その後を考えると逆に楽だったりするのですね。そしてさらにいうなら、会社にとっては歩く辞書がわりですね。本当にしんどいんですけどね、終わったときの爽快感はハンパあないのです。

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まとめ

というわけで、今日は翻訳のなかでも、むずかしい契約書翻訳についてまとめました。

  • 契約書の英語は難易度が高く、
  • ビジネス形態がわかっていないとはちゃめちゃに
  • でもその分自分の知識がうなぎのぼりで増えていくし(物知りになる)
  • その後取引きをするときは、それが逆に盾となり
  • ビジネスがやりやすくなる

でした。終わった後はもうおそらく、カカシのが役になるんじゃないかってくらい腑抜けに(使い物にならなく)なります。あんまりに疲れすぎて「(体力知力が戻らないんで)散歩してていいですか」って1時間くらい散歩に出してもらったこともあります。でもTOEICの点数をあげようとおもったときに長文を読みまくっていた時期があったので、趣味とか勉強でなく「好きなことしてお金をもらう」ってことがモチベーションになっているのかもしれませんね。辛いですけど楽しくもあるので、こんな選択肢もあるよーと知っていただければ幸いです。

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フリーランス通訳者。バンクーバー留学後、現地貿易会社にてインターン。貿易職を5年、世界30カ国以上の取引に携わる。通信会社にて社内通訳・翻訳を2年、ビックデータ関連の海外取引に携わる。国際交流のイベンター、司会業など複数の職を持ち英会話スクールのカウンセラーを併任。2020年に独立。
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