優れるな、異なれ【独学で通訳になってわかったこと】

通訳を本業として3年が経とうとしています。通訳って英語が得意であればできる、というわけではなくって。独学でなったからこそ「通訳」の師がおらず、「これでいいのかな」と思いながらトライ&エラーで進んできました。今日はそんな葛藤の日々と、その中で見つけた「自分の生きる道 (英語で食べて行く術)」についてふれていきたいとおもいます。
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「通訳学校」は優等生だらけ、基礎を徹底して叩き込まれる
通訳学校の大変さは、前の会社に派遣できていた通訳さんに聞き少しだけ知っていました。1週間でものすごい量の単語を覚えて、授業終わりはヘトヘトになり、それでも「山積みの課題」を持ち帰る。
逐次の練習、英字新聞の読み込み、しかもその授業をうけるスタートラインが「バイリンガル」や「TOEIC900以上」っていうんですから、私には遠い話しに思えていました。その通訳さんは「同時通訳」を目標としており、昼間は「通訳と翻訳」として働きながら、進級のためのテストをクリアするために1日何時間も勉強しておりました。「通訳」として雇ってもらうためには「経験数」が必要だと、土日も単発のバイトをしていたりと、本当に努力していました。
通訳に必要なのは、「英語力」だけではない
上にあげた通訳さんと知り合ったのは、某アパレル会社で貿易をしていたときのこと。そのときは、外国企業と自分が直接交渉する立場だったので、「英語を使って仕事」はしていたけれど、誰かの言葉を訳す機会はそんなにありませんでした。そして衝撃だった出来事が起こります。その努力家で「訳すこと」に精通していたその方は、「これからの海外展開に向けて、もっと商談経験のある(交渉力のある)人が欲しい」との会社都合で、他の会社にうつることになったのです。
私の当時の英語力はTOEIC780レベルでしたので、私が登用されることはなく。新しくきた人は「通訳学校に通ったことはない」けど、「通訳経験が豊富」な方でした。なんでもかんでも主張してくる外国企業の圧力に屈しない力強さもありました。そこで気づいたのは、「通訳」として活躍するためには、「必要な英語力」にくわえて、「商談 (海外取引) の経験値」が必要だということです。
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実際に、社内通訳になってわかったこと
それでもやっぱり「通訳さん」というお仕事に憧れて、英語を必死で勉強しました。通訳学校は入学金も授業代もたかく、年も年でしたので、ほぼ独学で勉強しTOEICは900点以上を取得。そしてひょんなことから通信関連の会社で社内通訳のポジションにつき、昨年の秋から、営業部に加え、社長室の通訳もつとめるようになりました。
そこで実際に通訳の仕事を2年して思うこと、それは上には上がいて、「逐次通訳」「同時通訳」つい見とれてしまうぐらいに美しい仕事をする人がいること。その人たちの姿を見るたびに落ち込むわけですが、でも気づいたことがあります。それは、そんなに凄い人たちが世の中にたくさんいるのに、私も通訳依頼をもらえている、という事実です。(優秀な通訳さんたちはもっともっと引っ張りばこで、もしかしたら自分はホントにラッキーなだけなのかもしれないが…)
「優れるのでなく、異なる」という選択肢
お恥ずかしいことに私は通訳としてまだまだ、だと思います。ものすごい集中力で最大限できることをしているけど、逐次も落としてる部分があるとおもう。拙さを正当化するわけでなく、いまもものすごい時間をかけて勉強の毎日なのですが、「優れること」だけが全てじゃないなとも思うのです。というのも私の武器って、
- 8年間、泣きながらも培ってきた外国企業との商談経験であり、
- 貿易経験による、商流を瞬時に把握する力であり、
- 海外とのコレポンで培った「意図を正確に伝える力」であり、
- それらの経験から身についた、怖気付かない力 (言い換えると図太い)であり、
- 契約書に精通していることだったり (カナダでその旨の資格を取り、50件以上翻訳してきた)
という、「通訳さん」という役割以外にも、「外国企業と商談をもつときに、一緒にいてくれると助かる人」といった側面が強いのです。でもそれでも月30万以上稼いでいるわけで、つまりそれは「通訳ができて、海外取引に精通している」というポジションに需要がある、ということでもあります。なにがいいたいかって、「通訳として優れる」手もありますが、自分の経験すべてを活かして「この人にお願いしたい」という人になる、という選択肢もあるということです。
わたしはきっと、優秀な通訳にはなれない
私はきっと「端から一字一句もらさずに訳していくような、完璧で優秀な通訳」にはなれない。 だからこそ、コンサル力や、契約関連の知識、商流や海外交渉の経験値を武器として、「希望着地率がものすごい、英語アシスタント 通訳(仮)」みたいなものになりたい、と思っている。
見惚れてしまうような、優秀な通訳さんはいっぱいいます。そしてその裏には、途方もない努力があることもわかるのです。でもですね「優秀な逐次通訳者」にはいるのは難しいかもしれないけれど、自分の経験を活かして「あの人にお願いしたい」という特別ポジションにはいる可能性は誰にでもあるとおもうのです。(だからって逐次通訳の練習をやめていいって理由にはならないので、もう日々ひたすら勉強ですが… トホホ)
来週は久々の社長通訳 (世界規模の大型案件) です。 世界のいくつかの支社の代表者も出るそうです。緊張しますが、それ以上にこんな尊い会議にはいれることが嬉しくてワクワクが強いです。背伸びはしない、でもやるべきことはしっかりと、好きこそものの上手なれ。まだ見ぬ景色を目指して、「自分らしさ」をけして殺さず、「自分らしく役に立てる」ことを探して、進んでいきたいなとおもうのでした。
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