【海外取引でのトラブルは超厄介】初心者が気をつけるべき3つのこと

通訳・海外交渉というと最初の取引にあたる条件交渉や、プロジェクトの進捗会議なんかが思い浮かぶかもしれません。しかし実際このお仕事をしていて多いのが、「海外取引におけるトラブル対応」です。具体的には、
- 行き違いの仲裁 (取引条件の見直し)
- 商品の品質が悪い (返品・作り直しの交渉)
- 契約の不履行 (当初の計画通りに製造が進んでいない)
- 輸送中の事故対処 (貨物紛失、ダメージにおける補償交渉)
といったものです。
大体先方様と揉めてから (または揉める寸前) に、ピリピリした空気の中「何とかならないか」とご依頼をいただくので、冷静に問題点は何かを洗い出して丁寧に交渉させていただき、解決に導くお手伝いをさせていただくことになるのですが。何十件と携わっているうちに「気をつけておけば防げるポイント」というのが見えてきました。今日は初めて貿易を始める方、海外取引を始めようと思う方にぜひ知っておいてほしい3つのことをまとめました。ぜひ保身のためにも、また余計な諍いやコストを生み出さないためにも、頭の片隅に置いておいていただけると幸いでございます。
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Contents
① 何を忘れても、契約だけは手を抜かない
実際に弁護士の方が『海外取引の成否は契約で9割決まる』という本を出版されています。タイトルからしても契約書の大切が伝わってきますね。英文契約所をみると何ページにもわたり難しい単語ばっかりが並んでいて、読みたくない…という気持ちはよくよくわかります。日本では契約は形式的なものでしかないといった慣習もあって、契約の存在は軽視されがちです。しかし、その取引がどう進むか舵をとるのが契約書なのです。
そもそも英文契約書がなぜあんなに分厚かというと、国ごとに違う慣習によるトラブルを避けるためです。
実際に読み込んでみるとわかると思うのですが、トラブルがあったときにどうするか、解約方法はどうするか、連絡方法はどうするか、連絡先や回数などびっくりするほど工数の殆どが記載されています。言い換えれば、契約書とは、「契約を相手に(なるべく希望通りに履行してもらえるよう必要事項を定めた) 自分の保身マニュアル」でもあるのです。
② 英文契約書は、隅々までチェックしてからサイン
契約書をよく読まなかったためにおこるトラブルには、下記のようなものがあります。
- 何かあっても契約解除ができない (3ヶ月前通知など条件が設定されている)
- 契約履行後、取引先を変えたら違約金を払うことになっていた (契約の終了部分の文言を見落としていた)
- 品質が満たなかったが、作り直すには追加料金が必要といわれた (クオリティ部分を甘く設定していた)
慣習が違う国との取引では行き違いがあってしかりです。なかには連絡が滞ったり、クオリティが悪いのに作り直しを拒まれたりいろんなケースがあります。そんな時にどうするか、対応策をあらかじめ記載しておくのが契約書なのです。
これを知らずに契約書を結んでしまうと、「相手の希望」は通るのに「自分たちの要望」は一切通らないという最悪のシナリオが待ち受けています。英文契約を殆ど読まずに締結するのは、『超不平等条約』を自らむすびに行くようなものです。
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③ 細かい所をケチると大損をこく
英文契約書をはじめとして、海外取引には細かく詰めておかなければならない部分が多々あります。
- 取引開始にあたる交渉
- 価格やインコタームズ (支払い条件) の決定
- その他輸送の方法・パッケージの方法
- 納期や納品の仕方
たとえば食品は輸送中にカビが生えることもあり、輸送方法や梱包をあらかじめ話し合っておく必要がありますし、金型などの製造をお願いする場合は「試作品のクオリティチェック」「万が一の作り直し」も加味して納期を決めていく必要があるでしょう。こういった交渉をGoogle翻訳などに頼っている会社様もありますが、結構なリスクです。
第三者に契約書チェックや翻訳をお願いするのはお金がかかると捉えられがちですが、相当額の取引がある場合はむしろ2,3万円〜の出費で取引の軸を作れるのでむしろ安くすむといえるでしょう。
もし確認不足でトラブルがおこった場合、第三者へ仲裁をお願いする場合、最低でも5万円 (月稼働2時間、以降1時間35,000円)と高額になってきます。まず今起きている出来事を把握してもらうことからはじまるので、2時間で解決するわけがなく、トータルの費用はかなりの額がかかるでしょう。
(金額参考値 弁護士様のサイト:https://www.mkikuchi-law.com/category/2103926.html)
Google翻訳に頼るのが危険な理由
たとえばどのくらい訳に誤差がでるのか、英文契約例の一部で試してみましょう。Liquidated damagesは『損害賠償額の予定条項』という意味で、実際の翻訳文書が下記となります。
本来の文書は「契約価格の全額に相当する額を、違反当事者が支払う」ですが、Google翻訳では「相手方に、精算された損害賠償を支払う」となっています。実際の契約書では『予定額を支払ってもらう』ことが示唆されているのに、Google翻訳では『清算された損害賠償を支払う』となっている時点で解釈がずれています。
こういった些細なズレが積み重なると、「契約内容」が曖昧でわからないまま取引がスタートすることになり、その歪みは絶対にどこかで表面化します。そして契約書がきちんと結べていない時点で、トラブルになった場合こちら側が不利な状況 (マイナス) からスタートすることになるのです。
プロに仲裁にはいってもらったとしても、先方との和解にはかなりの時間と額がかかることでしょう。
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まとめ
というわけで、本日は「海外取引でのトラブルは超厄介、初心者に気をつけて欲しい3つのこと」をご紹介しました。
- ① 海外取引のキーを握るのは契約書、契約だけは手を抜かない
- ② 英文契約書は、隅々までチェックしてからサインすること
- ③ 最初の契約条件だけでも、英語話者やプロにサポートを依頼する ( Google翻訳の過信は超危険)
「なんとかなる」と思っても、「なんとかならない」のが海外取引です。国際送金、国際輸送には思うより手間がかかり、慣習が違う国と取引lきするというのは、トラブルがない方が奇跡のようなものなのです。AI翻訳ができて誰でも海外と簡単にやり取りができるようになり、輸送も安く簡単に海外へと個人が進出できる時代になりました。「簡単に海外から物を仕入れられるようになった」のは確かですが、実際に海を超えて貨物をうごかす、人を動かすというのは言うほど簡単ではないのです。
たとえば中学で習う数学の公式なくして、高校の数学を解くことは至難の技でしょう。海外取引も同じ、国内取引で儲けることすら経験がある人ですら、海外へ出て利益を出すのは知識もコツも人脈もいるものです。
もし本気で成功したいのであれば、最初の交渉や契約段階で経験のある人に相談しましょう。「わからないことがわからないまま」進めてしまうととんでもないことになります。(URLの転記・リンクは自由ですが、生半可な情報を売ると被害が拡大しますのでこちらの情報の転売はおやめください)
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引用参考文献
- https://www.babel-edu.jp/pst-kougi/kyouzai/kyoutsuujoukou_252.pdf
- https://www.mkikuchi-law.com/category/2103926.html)
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