【初めてのクラウドファンディング】ひとり貿易で絶対気をつけるべき3つのこと

最近、クラウドファンディング関連のトラブル対応依頼をいただくことが増えました。
両手で数えられる件数くらいですが、概要は、
- 海外のクラファンサイトをみて、日本で成功するだろう商品を見極めて、
- 日本でも売れるだろうと思う商品の制作者に、はじからオファーメールを送り、
- 『独占販売契約』を結んで、日本のクラウドファンディングサイトへ出品
いう大枠 (ビジネス)のようです。
- 日本のクラウドファンディングである程度の注文数が担保されてからの発注 (発送)になるので、
- 資金ゼロ、在庫ゼロ、相手方が納得すればノーリスクでひとり貿易がはじめられる
というメリットから、「これはいい」として海外取引未経験の方々にじわじわと広まって行っているようですが、「オファーメール」に返答をもらって条件交渉できるところがスタートですから実際に成功する方は極めて低い印象です。また契約を結べたはいいものの、いざ物を日本へ輸入するとなった時に思わぬ費用の発生や、欠陥・予想外の出費を強いられる方も多く、そういった時の代行交渉をご依頼いただくことも多いです。
ただ契約書を結んだ状態で揉めている場合、こちらが迂闊に手出しをすると余計状況が悪化する可能性もあるわけで、はじめの条件交渉・契約内容の確認ならともかく、弁護士様にご依頼を…と言わざるを得ないパターンもございます。そういったご相談ごとを含めて、この記事では「クラファンでの未経験者貿易誘致」にうかうかと騙される前に、最低限知っておいていただきたいことを記載いたしました。何を忘れてもこの3つだけは覚えておき、なるべくトラブルは少なく、双方にとっても気持ち良い取引きとなることを陰ながら応援しております。
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クラファン活用、ひとり貿易で気をつけたいポイント
「情報売買」のような形で、活用塾などを開いているところもあるようですが、実態は主婦向け、リタイア層向けの情報弱者に簡単と称して「ハウツー」を教えているところも多いようです。
① 貿易はそんなに簡単ではない
もちろん、貿易の慣習など深く勉強されて実際に取引を開始される方もいらっしゃいます。また損も覚悟で経験してみて、知識をつけていこうと考えている方もいらっしゃるでしょう。しかしそういう方ですら、何かトラブルがあれば損を覚悟で早めに幕引きしたり、取引先や諸条件を変えたりと早めに手を打たれている方が多いです。このブログでも何度か注意喚起をしていますが、海外取引において、「サクっとやって何とかなる」ことはほぼ100%ないのです。
② 貿易にはこんなに手間がかかる!
例えば海外のクラファンサイトで大ヒットしている「子供用のおもちゃ」を日本に輸入するとしましょう。まずはやらなければならないことを、簡単に時系列でまとめてみます。
- 海外クラウドファンディングでめぼしい出品者に連絡する
- オファーメールへの返答を待つ (返答率は3%ほど)
- 条件交渉する (日本のクラファンへの出品、独占販売権の締結は可能かなど)
- 独占販売権およびNDA (機密保持)の締結
- 日本のクラウドファンディングサイトに出品
- クローズまでの間一定の受注を受けることができたら、取引先へ品物を発注
- 日本へ送ってもらう (前後で先方へ支払い)
- 品物を受け取り、注文主に発送する
いまはGoogle翻訳もポケトークもありますし、「案外できるかも」そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。これは本当に「最低限やらなければならないこと」の大枠だけしか記していないのです。
③ 見落としがちなこんな工数
しかしですね、上記の6までがトントン拍子にいっても、7にある貿易で、必ず通らなくてはならない関門があります。
今回の場合、今回「子供用のおもちゃ」が商品ですので、日本への輸入時「食品衛生規制」の対象となる場合があります。食品衛生法では、乳幼児が接触することによりその健康を損なうおそれがあるものとして、厚生労働大臣の指定するおもちゃについて、製造、輸入、販売、営業上の使用が規制されているのです。具体的に対象となる物品については、こちらのホームページ(おもちゃの輸入・販売手続き2020)に詳しくかかれています。
(おもちゃの輸入・販売手続き2020より引用)
ただ相手に日本向けに、商品を送って貰えばいいというものではなく、「輸入」するためにこれだけの工数をかける必要があります。ちなみに商品がついてから書類を揃えると時間がかかり、物流業者より倉庫保管の延滞料金が課せられる可能性 (結構高い) がありますので、事前に業者と相談して段取りを整えておく必要があります。
④ その他あり得る、貿易取引上のトラブル
- ワシントン条約で禁止されていて、輸入ができなかった (化粧品にありがち)
- カビが生えていて、全品破棄となった (食品にありがち、ナッツなど乾燥系も可能性あり)
- 余計なものがはいっていて、植物検疫など余計なコストが発生した
- 虫がはいっていた、その他余計なものがはいっていて結局日本に持ち込めなかった
「ひとり貿易」「在庫ノーリスク」と良い面だけがフィーチャーされていますが、貿易 (輸入)に必要な庶務や知識はしっかりと必要なことをまず認識しておくことが必要です。
逆にどんな手順が必要かを認識しておけば、消費者庁、税関、その他どこに問い合わせて何が必要かもわかっておくことができるので、未準備より確実に利益を担保した商取引を行うことができるでしょう。
⑤ これだけはやっておきたい3つのこと
それでも実際にやってみないとわからないことも多いかもしれません。
トラブルを防ぐために、最低限、
- ① 独占販売契約を結ぶ前に、サンプルを輸入して「輸入及び日本での販売に問題がないか」確認する
- ② 契約書をしっかりと結ぶ (問題があった場合は、絶対に契約書回帰となるので必ず全文読むこと)
- ③ Google翻訳を過度に活用せず、わからないところは徹底的に詰めておく (条件交渉だけでも、両国語が話せる人を用いてしっかりと交渉)
これだけは済ませておきましょう。そしてトラブルになった場合は、必ず契約書を確認すること。別に「嘘をつくこと」が当たり前の国もありますので、過信せずひとつずつ段階を踏んで着々と取引を前に進めていきましょう。
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まとめ
というわけでまとめ、「未経験でも出来る」というと聞こえはいいですが、実際は尊い灯台のあかりをもとに大海原へ飛び込むようなものです。海外との取引は「未知数」、商取引トラブルは常と心得てどうか覚悟の上で、最低限この3つだけは押さえておきましょう。
- ① 独占販売契約を結ぶ前に、サンプルを輸入して輸入及び日本での販売に問題がないか確認
- ② 契約書をしっかりと結ぶ (要全文読解)
- ③ Google翻訳を過度に活用せず解釈確認は確実に、疑問点は必ずクリアにしておく
起業塾などで学んだ物はあくまで「成功例」、貿易情報弱者を相手に中身の薄い情報をノートなどで販売されている方もいるようです。中にはオファーメールが返ってくるかを競っているようなところもあるようで、「気持ち」と「やる気」だけでは商取引は成立しないことを念頭においていただければとおもいます。海外取引はいかにトラブルを少なくするかが肝です。
ひとつひとつ問題点・懸念を潰して行って、段階を踏まないと必ずどこかで痛い目に遭います。先に会社を作ったはいいが、実際に輸入に必要な書類 (製造工程表など)を手に入れることができず、結局どうもいかなくなり会社事潰してしまった例もございました。焦りは禁物、どうかリスクを知って確実に、勢いで飛び込み火傷を負う方がどうか減りますように。(※ URLの転記・リンクは自由ですが、生半可な情報を売ると被害が拡大しますのでこちらの情報の転売はおやめください)